十文で二十文

 

                       十文で二十文

「ガチャン!」

「あっ、しまった!」と吉四六さんがさけんでも、もうおそい。台所の大きな水がめをうっかり割ってしまったのです。あたりはひどい水びたし・・・。

「こりゃ、わしとしたことが、大失敗。」

吉四六さんは、どうしたものかと首をひねりました。この大きな水がめは台所には必要なのです。おかみさんが帰ってきて、たちまちおこりました。

「まあ、しょうのない人だ。おまえさんがわったんだから、べんしょうしてくださいね。」

「わかった。わかった。」

財布をしらべて見ると、たった十文しかありません。あの大きな水がめは、いくら安く見積もっても二十文はします。

「うーん、よわった、よわった・・・。」

さすがの吉四六さんも十文のお金を前にして、とほうにくれました。

「さあ、早く買ってきてくださいな。すぐに水を使いたいから・・・。」

「二十文の水がめを、十文で買う、ええ、十文、十文・・・・。」

ぶつぶつひとりごとを言っているうちに、水がめを売っている、せともの屋の前に着きました。みると、やっぱり大きいのは、二十文です。 そして、小さいのが十文です。

「へい、いらっしゃい。何にいたしましょう。」と主人が、奥から出てきました。

「よし、十文で買ってみせるぞ。」

吉四六さんは、大きくうなずくと、わざとそのおやじにたずねました。

「この大きなかめは、いくらかね。」

「はい、はい、大まけして二十文ですよ。」

「ほう、二十文ね。・・・じゃあ、こっちの小さいのは。」

「ぴったし十文です。」

「十文だね。 なるほど、じゃあ、今日は、十文のかめをもらうわ。」

「まいど、ありがとうございます。」

吉四六さんは、小さいかめを買って帰ったので、おかみさんは、カッカとおこりました。 明日になれば、大きなかめになると言ってすまし顔の吉四六さん。

つぎの日、おかみさんがどなりました。

「おまえさん、まだ水がめは大きくなっていませんよ!」

「あ、そうそう。では、ちょっと出かけてくるよ。」

吉四六さんは、小さい水がめをかかえて、きのうのせともの屋へ行きました。

「おや、昨日のだんなさん、どうしました。」

せともの屋のへんな顔をしているのもかまわず、大きな水がめを指さして、

「これ、二十文だったね、たしかに。」

「はい、はい、その通りでございます。」

「それでは昨日買った小さい方は、お返ししてと・・・。」

吉四六さんは、大きな水がめをかつぎますと、スタコラ歩きはじめたあとから主人が、「ま、まってくださいよ。それは二十文です・・・・。」

「はい承知してますよ。」

「だ、だったら、あと十文払ってくださらなきゃ・・・。」

立ち止まって、吉四六さんすまし顔で答えました。

「おかしなことを言うおやじさんだね。 だってそうだろう。よく考えてごらんよ。きのう、わたしは、十文払ってあるだろう。」

「へい、たしかに。」

「それに、今、十文の水がめをあげたんだから、あわせて二十文あげたことになる。」

「十たす十で二十。ちっともおかしくないだろう。」

「あれれ、それもそうだな。ちゃんと二十文になる。」

「では、いいね。どうもありがとう。」

大きな水がめをヨイショとかついでいく吉四六さんの姿が、見えなくなっても、・・・。

せともの屋の主人は、

「十文と十文であわせて二十文。でもなんだかうまくだまされたみたいだなあ。」

と、いつまでも数えなおしたり、首をひねったりしていました。

                   日本の民話 とんち話より

                       鞄血社刊