もぐさのききめ

 

                    もぐさの ききめ

 昔、むかし、ある家に、真夜中のこと、どろぼうが入ったわい。

(あるじ)のまくらもとを見ると、金箱があるもんで、どろぼうは、

「これは、しめた。」と風呂敷に包んで、ひっかついで逃げ出した。

主は、なにやらあやしいけはいに、目をさましました。見ると、まくらもとにおいた金箱がない!。

「さては、やられた・・・。」と、手燭をもって、家のまわりを探してみましたが、もう、どろぼうの姿は見えなんだ。

すごすご帰ってくると、庭先の土の上に、足あとが二つ。

「ははあ、どろぼうの足あとじゃな。よいものを見つけたわい。」

さっそく、主は、両方の足あとに、もぐさをどっさり盛り上げて、そして、火をつけた。 おきゅうをすえるというわけじゃ。 もぐさは、煙を出して、じりじり燃えはじめた。

  こちらは、金箱をかついで逃げるどろぼうじゃ。むちゅうで走っておるうちに、こりゃどうしたことじゃ。足の裏が、だんだんあつうなってきたワ、 「あちちち・・・・。 あちちち・・・・。」

いいながら走っておった。そのうち、足の裏が、火のようにあつうなって、走るどころか、歩くこともできんようになった。しまいには、じりじり焼け付いてきて、立っておることもできなんだ。

「さては、あの家の、おやじのしわざか・・・。 ええい、くそっ。とんだ家に入ったもんだ。」 どろぼうは、両手をついて、いざるようにして、ぬすみに入った家の方へひき帰した。

主の方では、さかんに、もぐさをもやしておった。すると、植え込みのかげで、ヒーヒー泣く声が聞こえてくる。

「だれじゃ、だれじゃ。」といいながら、そばへ寄ってみると、ずうたいのでっかいひげづらの男が、ひざをついて、大きな涙を、ぽろんぽろん落として、 「ごかんべんを、どうぞ、かんべんしてください。」と、いいながら、両手で金箱をさし上げて、しきりとあやまるのじゃ。

「おう、 どろぼうどのか。よう、もどられたな。」

主が、金箱を受け取るが早いか、どろぼうは、逃げるように姿を消したわい。

「やれやれ、あつかったことじゃろうに・・・。」

主がつぶやきながら、えん先にもどって見ると、もぐさは、みんな燃えつきておった。

                    完                                      

                日本の民話  不思議話より

                   株式会社東光社刊