こんにゃくえんま

 

  こんにゃくえんま

 むかし、むかし。

ある村に、えんま大王をまつったお堂があった。

なにしろ、閻魔大王といえば、地獄の王様じゃ。金の目をひんむいて、大きな口をクワーッと開けて、すごい顔をしてにらんでござる。

はあ、見ただけでも、恐ろしいもんだから、あんまりお参りの人も来なんだ。

ところが、この閻魔堂に、雨が降っても、風が吹いても、一日中かかさず、お参りに来るばあさまがあった。

ばあさまは、両方とも目が見えんもんで、孫の小さな女の子に、いつも手をひかせて来るのじゃった。

ぽかぽかと暖かい、お彼岸のある日。

お参りに来たばあさまは、いつものように、閻魔様の前に、座った。

女の子は、こわいもんで、ばあさまのうしろに、かくれておった。

「なんまいだー。なんまいだー。お慈悲深いえんま様。どうぞ、あなた様のお力で、このばばの目を治してくだされ。なんまいだー。なんまいだー。」

ばあさまは、繰り返し、繰り返し、えんま様の前でおじぎをした。

えんま大王も、こうして、毎日毎日おがまれると、声をかけずにおれなくなった。

「これ、ばばよ。おまえの願いは、聞いてとらす。よう信心してくれたお礼に、わしの片目を進ぜよう。」

閻魔様が口をきいたもんで、ばあさまはおったまげて、上を向いた。

「ありゃ、見える。見える。そら、あたりがよう見える。」

ばあさまの右の目が、ぱっとあいたのじゃ。

ばあさまは、初めて、えんま様の大きなお姿を見て、びっくりするやら、喜ぶやら・・・

その時女の子がさけんだ。

「あっ、えんま様の目が一つない。」

はっと見上げると、ほんにえんま様の目が一つつぶれとる。ばあさまは、ぽろぽろ涙を流して、

「ああ、申しわけございませぬ。 おまえ様を、かたわにして、わしが見えるようになるとは・・・・ああ、もったいない、もったいない。」

すると、片目のえんま様が言うた。

「まあ、そう心配せんでもいいわ。わしはおまえ達とちごうて、別に、働かなくてはならんという事もない。ここに、こうしておるぶんには、片目でも十分じゃ。」

「へえ、もったいない。ところで、何かお礼をさせていただきとうございますが。」

「お礼・・・そんなものはいらぬ。もらうとかえって心苦しい。」

「いいえ、どうぞ どうぞ、 そうおっしゃらずに、わたしに出来ますことを、させて下さいまし。」

「さようか、それでは、こんにゃくを供えてくれ。わしはこんにゃくが大好きでナ。」

そう言われたばあさまは、毎日毎日、えんま様にこんにゃくをお供えした。

その事がナ、村じゅうの評判になって、えんま様は、「こんにゃくえんま」と、呼ばれるようになった。

お参りの人も増えて、毎月、縁日には、境内に、こんにゃくおでんの店が、ズラリとならぶようになった。

おかげで、えんま様も、すっかり顔つきが変わって、残った目を細うして、にこにこ笑ってござるそうな。

                        完

              日本の昔話 こわい話より

                  株式会社東光社刊