ねことねずみ

           ねことねずみ

     (神奈川県津久井郡平塚市の物語)

 やっぱし大むかしのことだ。ある年の暮れに動物の神さまが

「元旦に新年のあいさつにこい。そしたらば、一等から十二等までは、じゅんにその一年のあいだ動物の(かしら)にしてやるどぉ」と、おふれをだしたんだって。

「よーし、わしこそは、来年の頭になってやるどぉ」

って、山や森や野の動物どもは、元旦をいまか、いまかとまっておった。

ところが、ねこはどうしたもんだか神さまのところへ行く日を忘れてしまった。

で、仲のいいねずみのところへききに行った。

「ほうかい、ほうかい。二日にいけばいいだな。すまん、すまん」

ねこは、うれしがって帰っていった。

大みそかになった。牛は、うすっ暗い小屋ん中でモソモソやっていた。

「わしゃあ、ひと一倍のろまやで今夜たつことにするべ」

と、旅支度をはじめた。それを屋根うらからのぞいていたねずみは、そっと牛の背にとびのってしまった。

牛は、夜道の霜をふみふみ御殿へむかって行った。

<だーれもきてねぇ、今年の頭は、わしにきまったみてえなもんだゎ>

牛は、よだれをたらしながら開門をいまかいまかとまっておった。

コケコッコー  コケコッコー

里のほうで一番どりがときをつげると、門は、おもむろに開いた。牛が門をくぐろうとしたときだ。背なかにいたねずみがとびおり、チョロ、チョロっと門の中に入り

「あけましておめでとうございます。ねずみが新年のあいさつにあがりました」

と、一番のりを名のった。で、牛は、二等になり鼻の穴をべろでなめておった。

とらは、千里の道をヒューととんできたが三等になった。つづいてうさぎ、たつ、へび、うま、ひつじ、さる、とり、いぬ、いのししがはいってきたところで、門は、しめられた。これが十二支のはじまりだ。

ねこは、二日の朝はやく門をたたいたが、神さまに

「なんでぇ、いまごろきやがって、もう十二番までの頭は、とっくにきまっちまった。ねぼけてねえでつらでも洗って出なおしてこいっ!」

と、どやされて帰って行った。

それからねこは、顔を洗うようになり、うそをこいたねずみを憎み、いまもねずみをみるととって食うようになったんや。

それからな、職人しゅうで仕事におくれてきて仲間にはいれんものを「あいつは、ねこ年」だというようになったんや。

ところで、おめえさんは、なに年だね。

                  むさしの児童文化の会発行

                   「かながわのむかしばなし」より